ダンス部にクッキング部出身の選手も 今治北がつかんだ初の都大路

引用元:毎日新聞
ダンス部にクッキング部出身の選手も 今治北がつかんだ初の都大路

 全国高校駅伝の切符を初めてつかんだ女子の今治北(愛媛)の選手たちの経歴はユニークだ。ダンス部やクッキング部など陸上と縁遠い部活に入っていた選手らが都大路を駆ける。

 11月2日の愛媛県予選、主将の越智愛奈(3年)が1区区間賞で流れを作ると、3区の馬越彩未佳(うまこし・あみか)(1年)と4区の秋山凜花(3年)が連続区間賞でリードを広げ、初優勝を果たした。区間賞を取った3人に共通するのは、高校の途中で陸上に転部したことだ。

 エースの越智はダンスに打ち込んできた。小学校に入る前から始め、自宅近くの教室でヒップホップなどを習っていた。

 走ることも得意だった。地域のマラソン大会で好成績を残していたため、中学では周囲の勧めで陸上部に入った。しかし、「練習がきつくて、気持ちがやられた」。今治北に進学すると、ダンス部に入部した。

 すると、陸上部の山本隆祥監督から誘いを受けた。

 「力を貸してほしい」

 「陸上をやめるのはもったいない」

 越智の親戚と知り合いだった山本監督は、中学時代の走りを見て、長身で長い脚が長距離向きだと感じていた。

 校内で会うたびに声をかけられた越智は、次第に「中学の時のライバルが高校で記録を上げているのを見て、悔しくなってきた」と気持ちが変わり、1年生の10月に転部した。

 2年夏までは膝の故障を繰り返したが、冬場にケアを見直し、継続して練習できるようになった。今夏は3000メートルで全国高校総体に初出場。自分でも「まさか、ここまで」と驚くほど成長した。

 今春、1年生3人が入部し、部員数が5人になった。駅伝は全5区間でギリギリ出場できるが、好成績を目指すには、人数が十分でない。

 山本監督は勧誘を続けた。

 今年6月に入部したのが馬越だ。

 中学ではバスケットボール部だった。しかし、自宅が瀬戸内海に浮かぶ伯方島で、通学に高速バスで1時間弱かかる。高校では活動時間の長い運動部に入ることをためらい、活動が週1回で3年生の姉もいるクッキング部に入部した。

 体育の授業の長距離走がきっかけで山本監督に誘われると「新しいことにチャレンジしてみたくなった」。家族にも背中を押され、陸上部に移った。

 さらに、その数週間後、バスケットボール部で高校最後の大会を終えた秋山が加わった。

 7人で都大路を目指すことになったが、経験の有無による力の差はある。当初は練習の本数や強度を選手ごとに細かく調整した。馬越は「集団走で遅れそうな子の背中を先輩が押してくれた」と振り返る。少しずつ練習の質が上がり、10月になると、集団で走っても遅れる選手がほとんどいなくなった。その結果の県予選優勝だった。

 少子化も進む中、部員数の確保は地方の公立校にとって課題だ。

 愛媛で昨年まで都大路に18年連続で出場していた女子の八幡浜は、今年、メンバーの確保に苦しみ、県予選で4位に終わった。

 2019年から今治北を率いる山本監督がこれまで陸上未経験者も含めて勧誘してきたのも「チームがなくなることだけは避けたい」という思いが強かった。

 山本監督は「たとえ(強豪に)歯が立たなくても、全国の舞台を経験させてあげたかった」と話す。都大路を走る経験は、さまざまなバックボーンを持つ選手たちにとって、今後の財産になるはずだ。【深野麟之介】

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 男子第76回、女子第37回全国高校駅伝競争大会(毎日新聞社など主催、SGホールディングス特別協賛)は21日、京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に男子が7区間42・195㌔、女子が5区間21・0975㌔のコースで争われる。都大路を駆ける今大会注目の選手やチームを紹介する。