<キャンパる>箱根駅伝“区間賞”を狙う東大・秋吉選手 学生連合で2回目の挑戦

引用元:毎日新聞
<キャンパる>箱根駅伝“区間賞”を狙う東大・秋吉選手 学生連合で2回目の挑戦

 第102回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)が来年1月2~3日に行われる。新春の箱根路を走ることができるのは、出場校20チームだけではない。学校としての出場がかなわなかった選手も「関東学生連合」として、たすきをつなぐ。今年から、学生連合の編成方法が変更された。その狙いはどこにあるのか。そして、昨年に続き学生連合に選抜された注目の東京大学工学部4年の秋吉拓真選手(22)に、2回目の箱根にかける思いを聞いた。【早稲田大・奥村慎(キャンパる編集部)】

 ◇大きく変化した学生連合の選出方法

 箱根駅伝に学校として出場するには①前年度大会で10位以内に入りシード校となる②秋に開催される予選会で上位10位に入る、という二つの方法がある。10月の予選会には各校10~12人、合計500人近くが同じハーフマラソンの距離を走り、上位10人の合計タイムで出場校を決定した。

 学校として出場できなかった選手たちにとって、より重要なのが個人順位だ。前回の第101回大会まで学生連合の選手は、単にこの個人順位の上位から順に選ばれていた(出場校の選手と留学生は除く、また1校1人まで)。出場回数にも制限があり、箱根駅伝本戦に出場したことのある選手は除外されていた。

 第102回大会ではこの選出方法に大きな変化があった。まず、予選会で学校順位が11~20位で惜しくも出場を逃した大学から、1人ずつ選ばれる。校内選考の方法は自由と、各校に選出を委ねたのがポイントだ。そして11~20位以外の大学の選手から、予選会の個人成績の上位6人を順に選抜(留学生は除く、1校1人まで)。出場回数の制限は緩和され、2回目まで参加できるようになった。

 この変更について、箱根駅伝を主催する関東学生陸上競技連盟は「(選抜方法の変更で)予選会終了後も落選校内において、個人での本選出場を目指した切磋琢磨(せっさたくま)を生むこと(=チーム枠)と、チーム順位は下位でも出場を可能とすることによる多様性の確保(=個人枠)との両立を図る」とその趣旨を説明している。2回目の出場を認める点については「経験の幅広い共有と、箱根駅伝を通じた選手強化の両立を図る」狙いがあるという。

 ◇ルール変更が可能にした2回目の選出

 今回「個人枠」の成績を満たし、さらに2回目の出場容認を受けてメンバーに選ばれたのが東大の秋吉選手だ。第101回大会でも学生連合の一員として復路の8区を走り、区間7位相当の好成績を収めていた。

 兵庫県西宮市で育った秋吉選手は、中高一貫の六甲学院在籍中に、長距離競技の陸上選手として頭角を現した。勉学でも成績優秀で、東大を受験し、現役で合格。大学でも陸上を続けた。秋吉選手の箱根駅伝へのこだわりは強い。「高校の時から箱根は見ていて、自分の意識として箱根に出ないと大学で陸上をやる意味ない、くらいに思っていた」という。

 1~2年生の間に着実に実力をアップさせ、前回の101回大会で秋吉選手は学生連合の16人のメンバー入りを果たす。ただ、秋吉選手の予選会個人成績は16人中11位(全体では77位)。例年、箱根駅伝本戦で走れるのは、連合チームのメンバー内の上位10位とされることが多かった。本戦出場は厳しいように思われたが、学生連合の監督を務めた小指徹・東京農業大学監督の選考により、本戦出場メンバー入りを果たした。「小指監督は『今年は改めて選考する』と言って、追加で何本かレースを行ったうえで決めてくれた」のだという。

 ◇悔しさが残った前回大会

 そうして迎えた昨年1月3日。8区を走り、どんな景色が見えたのか。「沿道の人が途切れることが無い。すごい人気なんだな、そしてその中で走れるのはすごく幸せなことだなあとかみしめた」という。

 さまざまな大学から選手が集まる学生連合チームだが、たすきをつなぎきる自信はあったのだろうか。秋吉選手は「チームのために、というよりも自分がいい走りをした結果、チームの良い結果につながる、という考え方があり、失敗したらどうしようっていう気持ちは少なかった」とも話してくれた。

 区間7位相当の記録には満足していない。「区間賞、1位相当のタイムを出したい、区間新記録相当も出せる、とまで思っていたので、悔しさが残った。当時は(学生連合として1人)1回しか出られないルールだったので、もうちょっとやりたかった」

 それ以降はトラック競技の練習を続けていた秋吉選手。学生連合の選出システムが変わったのを知ったのは一般に公表されたのと同じタイミングの今年6月。もう一度訪れたチャンスに「ラッキーだった」と振り返る。

 ◇予選会好成績で成長を自負

 1年間、大きな故障なく練習を続けたことで、選手としてより一層成長したと自負している。予選会での個人成績は、昨年より65位も高い全体12位(日本人選手だけでは5位)と飛躍的にアップした。それでも「余力があった」と言い、箱根での目標についてはこう語る。「今年はやっぱり往路を走りたい。往路はトラック競技で走るようなスピードも必要になってくる。箱根駅伝に出てみたいなって思ったころから1区に憧れがあるので。ただ、どこを走るにしても区間1位相当のタイムを目指したい」

 秋吉選手は現在、義足を用いるアスリートの運動について研究している。箱根の時期は、卒業研究の時期でもある。研究と競技の両立は難しくないのだろうか。「陸上競技は、長く練習すればするほど良い、というものではない。すごく苦労しているという感覚はない」とこともなげに話す。

 そして、ともに前回大会に出場した当時東大大学院所属(東大とは別の所属としてカウント)の先輩、古川大晃さん(30)の存在に何度も言及していたのが印象的だった。「学生連合に選ばれてからもずっとコミュニケーションを取っていました。年齢差はあるんですけど、広い心で接してくださって。自分が東大に入った時、一番速かったので、目標にできたのは大きかった」

 ◇「限界がどこなのか見極めたい」

 卒業後は、大学院に進学すると同時に実業団「M&Aベストパートナーズ」に入り、長距離競技を続けるという。「両立を認めてくれる実業団があったのでチャレンジしてみよう、と。良い環境で突き詰めたい。もっと良い環境でやったらさらに伸びて、限界が見えるんじゃないかって。行けるならオリンピックとかの目標が出てくると思うんですけど、自分の限界はそれより手前かもしれないし。限界がどこなのかを見てみたい」

 102回大会では誰に見てもらいたいか。そう尋ねると、真っ先に出てきたのは支えてくれた人たちの存在だった。「多くの人、OBの方にも支援してもらって、チームメートと切磋琢磨できて自分が箱根駅伝に出られると思っている。学生連合は寄せ集めじゃないか、と言われることもあると思うが、自分たちの大学、チームで戦った結果、自分は学生連合にいる。周りの人への感謝を忘れずに走りたいと思う」

 2回目の箱根駅伝まであとわずか。「やっぱり速く走っている人が面白いと思うので、速く走ることにはこだわってやっていきたい」。どこまでもまっすぐに勝負へこだわる姿勢は、新春の箱根路でもきっと見られるに違いない。