1日の東京マラソンには、大会史上最多となる約3万9千人のランナーたちがそれぞれの思いをかかえて挑んだ。その一人、理学療法士としてスポーツ選手のリハビリを担当する高嶋直美さん(61)は昨年、乳がんがみつかり、手術を経て放射線治療を受ける中で出場を決意した。「病気なんかに負けていられない」。42・195キロに向かわせたのは、そんな強い思いだった。
■手術直後から練習開始
五輪など国際大会で活躍するスポーツ選手をサポートする「国立スポーツ科学センター」(東京都北区)で、高嶋さんはけがをしたトップアスリートたちのリハビリを支えている。自身も、これまで東京マラソンを含めて50回以上フルマラソンを走り、ゴールタイムは3時間を切った経験も持つ。体力には自信があっただけに、「それ」はあまりにも突然にやってきた。
昨年8月、職場の健康診断で超音波検査を受けたところ、右胸に異常がみつかった。いつもと明らかに違う医療スタッフの反応を見て「あ、終わった。どうしたらいいんだろう」と不安に陥った。乳がんと診断された。翌月、すぐに手術を受け、現在も放射線治療とホルモン治療を併用している。
そんな高嶋さんを前に向かせたのが、いつも身近に接しているスポーツ選手たちの存在だった。理学療法士としてけがを負った選手の復帰を後押しし、再び世界で活躍する姿をみると、いつもうれしく勇気をもらえた。
「自分も落ち込んでいる場合ではない」。自らを奮い立たせた。手術から3日後、1時間半のウオーキングを手始めにトレーニングを再開し、今年の東京マラソンでレース復帰を果たすことを目指した。
今回の大会には、日本勢で男女それぞれ2位を達成した鈴木健吾と吉川侑美をはじめとして、リハビリを担当してきた選手たちも名を連ねている。ゴール後、思いを分かち合いたい-。その気持ちが原動力となった。
■亡くした仲間のために
ただ、ショックだった出来事もある。昨年と一昨年、ともに東京マラソンに出場したスポーツ選手ががんで亡くなった。「今年もまた会えるはずだったのに…。私は生き残った。彼の思いも背負って走りたい」。そう誓った。
学生時代に「1回ぐらいは走ってみるか」という軽い気持ちで始めたフルマラソン。この日、4時間36分52秒でのゴール後、高嶋さんは「5キロまでは、10キロまではと思いながら走った。30キロ過ぎたところで絶対にゴールすると決めた」とし「次はもっといいタイムを出したい」と声を弾ませた。その視線は、早くも20回目の節目となる来年大会に向けられている。(宇都木渉)
がんサバイバーの女性、東京マラソンでランナー復帰 「次はもっといいタイムで」
引用元:産経新聞


