3日に行われた第102回箱根駅伝の復路7区に、東京大学工学部4年の秋吉拓真選手(22)が関東学生連合の選手として出場した。現役学生が作る新聞紙面「毎日新聞キャンパる」の編集部は、昨年に続き2度目の出場を果たした秋吉選手の走りに注目。昨年末に一度体調を崩しながらも復調を果たし、快走を披露した秋吉選手にレースを振り返ってもらった。【早稲田大・奥村慎(キャンパる編集部)】
◇アクシデントを乗り越えて
2日の往路を20位相当で終えた学生連合は、トップの青山学院大と13分54秒の差があった。このため復路最初の6区では規定により、青学から10分以上の差を付けられた他の7チームと同時に、青学の出発から10分後に一斉スタート。7区で秋吉選手がたすきを受け取った時点の順位は着順で17番目だった。比較的近くで先行する複数の選手を追いかける形でのスタートで、「一人でも多く追い抜くのが自分の役割だと思った」という。
途中、ときおり脇腹を押さえるようなシーンがあった。「最初はすごく体の動きが良かったが、5キロ過ぎから差し込みが来てしまった。自分の中では結構気持ち良いペースで走っているつもりだったが、やっぱりちょっとオーバーペースだったのかな。駅伝は難しいなあ、って」と悔しそうな表情で振り返った。
レース前のインタビューで、秋吉選手は8区で起用された前回大会を振り返り「たすきをもらった瞬間に気分が上がって100メートルくらいダッシュしてしまったが、その後は特に緊張せずペースを抑えられた」と語っていた。
◇4人抜き、区間4位相当で締める
スムーズにレースを運べた前回にはなかったアクシデントに見舞われても、力強い走りを失うことはなかった。11キロ過ぎの時点で14番目に浮上。「駆け引きとかはなく、自分のペースを大事にした。常にもう一個先を見据えて走った」と、至って冷静だった。
最終的にはさらに一つ順位を上げ、着順で13番目のたすき渡し。4人抜き、区間4位相当の見事な走りはテレビ中継の中でも取り上げられた。「(終盤、身体の)動きが止まってきているなと思ったがその中でも何とかして最後まで体を動かそう、というのを見せられたのは良かった」と総括した。
オープン参加の学生連合は総合16位相当でフィニッシュしている。復路だけで見れば中央大に次ぐ7位相当。2016年の第92回大会以来、10年ぶりの復路1ケタ順位だった。
◇規定変更でつかんだ2度目の箱根
学生連合は、学校として出場できなかった選手の中から選ばれたメンバー16人で構成(うち出場は10人)される。従来は予選会の個人成績の高い順で1校1人(留学生を除く)が選抜されていたが、今回から選抜方式が大幅に変更。予選会11~20位の学校が1人ずつ選抜メンバーを選べる「チーム枠」と、21位以下の学校から予選会個人成績上位6人(留学生を除く、1校1人)を選ぶ「個人枠」が設けられた。さらに従来は学生連合で出場できるのは1回だけだったが、今回から2回まで出場が可能になった。
秋吉選手は前回大会でも学生連合に選抜され、8区で区間7位相当の成績を残した実績がある。今回大会の予選会でも個人12位(留学生を除くと5位)の好成績を残した秋吉選手は、前回大会までの規定では不可能だった2回目の出場を勝ち取った。
◇直前に体調不良も「出し切った」
今回の学生連合は、監督を務めた法政大・坪田智夫監督の下で、選抜メンバーによるタイム走などの結果も加味した「順位」をもとに出場10選手を選び、「順位」が高い選手から希望の区間を選んだという。
秋吉選手はレース前に「高校生の時から1区に憧れがあった」と話していた。直前のコンディション不良などもありその希望はかなわなかったが、秋吉選手は前を向いていた。「往路を走りたい気持ちはもちろんあったが、箱根を走れることには変わりがないし、復路を走るのであれば区間賞相当のタイムを狙おうと思った」
レース中、坪田監督からの声かけも多くあったという。「途中、区間4位と同タイムだぞ、と言われた。自分の中できつくなっていたが、(励ましのおかげで)出し切って走ることができた。楽しかった」。大学生活最後の箱根駅伝を走り終えて、「区間賞に届かず悔しいなという気持ちもあるが、最後まであきらめずに体を動かし続けられてよかった」と語った。
◇話題の“給水コンビ”も応援
沿道には多くの関係者が応援に駆けつけていた。「両親にはずっと支えてもらったし、他にもチームメートやコーチとかも。高校の同級生は、両親と一緒に沿道で名前の入ったのぼりを掲げて応援してくれた。応援してくれたすべての人に感謝を伝えたいと思う」
その中には、前回の学生連合チームで主将を務めた、当時東大大学院生(東大とは別扱い)の古川大晃さん(30)の姿もあった。前回は秋吉選手からたすきを受けて9区を走ったが、今回は沿道から声援を送った。秋吉選手の走りについて「いち応援者としてすごく楽しませてもらった。今年一段と強くなっていて、成長がみられてうれしい」と顔をほころばせた。
また、前回大会で古川選手に給水する姿が「給水おじさん」として話題を呼んだ東大大学院名誉教授・八田秀雄さん(66)も沿道から秋吉選手の力走を見守った。八田さんも「今までほとんど無かった体調不良もあり、12月後半は心配したけれど、素晴らしい走りを見せてくれた」とたたえた。
◇挑戦は続く
箱根駅伝が秋吉選手の競技人生のゴールではない。4月に大学院に進学すると同時に実業団「M&Aベストパートナーズ」に入り、長距離競技を続ける意思を固めている。これからの目標については「2月頭にハーフマラソンを走ろうと思っているので、まずはそこで結果を出すこと。そして来年度からも一個一個、自己ベストを更新していく、というところを目指してやっていきたい」と話した。
競技を続ける中で、「自分の限界がどこなのか見てみたい」と話していた秋吉選手。その目は、もっともっと、先を見据えている。
<キャンパる>2度目の箱根駅伝で快走 学生連合メンバーの東大・秋吉拓真選手
引用元:毎日新聞


