全国制覇5回の名門校から選手が集団転校したチームが、優勝候補の一角として都大路に臨む。21日開催の男子第76回全国高校駅伝競走大会で2年ぶり9回目出場となる鳥取城北。前回大会2位の大牟田(福岡)から移った赤池健監督(53)を追い、18人が今春転校した。大人の事情に翻弄(ほんろう)されながらも、元々いた選手たちと転校生たちが一つのチームになり、鳥取勢初優勝の偉業に挑む。
大牟田OBの赤池監督は同校駅伝部コーチを経て2006年2月に監督就任。23年3月に前年夏の部員への体罰が発覚して退職したが、指導継続を望む当時の部員や保護者の声を受け、研修を経て部活動指導員として1カ月後の4月に現場復帰した。
◇大牟田は前回準優勝
24年12月の前回大会では実質的な監督のヘッドコーチとしてチームを準優勝に導いた。
だが、学校側は11月、25年度からOBでトヨタ自動車九州コーチ(当時)の磯松大輔氏(52)を新監督にする方針を関係者に伝達していた。サポート役に事実上降格することに赤池監督は「私を辞めさせたいという学校側の意向を以前から感じていた」と不信感を募らせた。
部員と保護者が学校側に方針撤回を再三求めたものの覆らず、赤池監督は今年3月に退職し、勧誘を受けた鳥取城北に4月から保健体育科教員として勤務することになった。
◇転校で半年出られず
部員19人中18人が一緒に転校し、入部予定の新入生15人中11人も進路変更。全国高校体育連盟の規定で転校後6カ月未満の選手は出場できないため、転校生は今夏の全国高校総体への道を断たれた。
昨夏の同総体男子1500メートル4位の本田桜二郎選手(3年)は「中学時代にバスケットボール部で陸上大会に借り出された僕を見いだし、大牟田に誘ってくれたのが赤池先生。(同校のある福岡県)大牟田市に住む親は転校に反対したが、説得した」と振り返り、同総体出場を逃したことには「最終目標は都大路なので」と強調する。
転校生や新入生を含めて部員56人(他に女子マネジャー5人)となった鳥取城北駅伝部。選手寮が新たに用意され、37人が入った。
だが、全国高校駅伝5回優勝で前回2位の大牟田にいた選手たちと、近年は全国大会常連校になりつつも最高成績30位(23年)の鳥取城北にいた選手たちでは競技力や意識に差があった。赤池監督は従来の在校生グループと転校生グループにそれぞれ主将を置くダブル主将制を敷いた。
◇徐々に垣根なくなり
従来組の主将の早田慶哉選手(3年)は「大量転校や入寮に戸惑いや不安があった。転校生たちは競技への意識が高く、自分たちと違うと思った」と感じ、転校組の主将の宗像琢馬選手(同)は「新しい練習環境、元々いた選手たちとの関係、新しい学校生活と三つの不安があった」と明かす。それでも、夏休み中の4回の合宿を終える頃には垣根はなくなったという。
「昨年まで月間走行距離は450~500キロだったが、今年の夏場は700~740キロ。練習の質も量も上がり、意識も変わった。転校生たちの存在は自分のプラスになった」と早田選手。
◇分け隔てなく指導
赤池監督は「夏合宿では鳥取城北に元々いた3年生が一番頑張っていた。私も当初は元々いた部員たちに遠慮があり、強くものを言えなかった。だが、夏以降は両者を分け隔てる意識は全くない」と言い切る。
高校駅伝では12年、仙台育英(宮城)の選手10人(男子7人、女子3人)が豊川(愛知)に集団転校したケースがある。同年の全国高校駅伝で同校は男子で初出場初優勝したが、論議を呼んだ。
鳥取城北駅伝部の寮の舎監を務める赤池監督の妻もやいさん(52)は「大人の事情で子供たちに転校という大きな決断をさせてしまった」と指摘する。
全国高校駅伝で鳥取勢の最高成績は由良育英(現鳥取中央育英)の2位(79、92年)。今大会出場校中4位の予選タイムの鳥取城北は優勝を狙える位置だ。
◇「笑って終わりたい」
県予選で補欠を含むエントリー10人は転校組だったが、今大会メンバーには従来組から前々回6区35位タイの中原優月(3年)、山根爽楽(そうら)(同)両選手が入った。
前々回2区10位、前回1区2位の本田選手は「昨年と同様にチームに流れを作る走りをしたい。個人としてもチームとしても笑って終わりたい」と望み、同じく転校組の、前々回7区11位で前回7区3位の村上遵世選手(同)は「昨年は自分が抜かれて2位。その悔しさで1年間やってきた。都大路の借りは都大路で返したい」と誓っている。【来住哲司、長岡健太郎、阿部浩之】
大牟田から集団転校の鳥取城北 ワンチームで県勢初の優勝目指す
引用元:毎日新聞


