【オートレース】慎重で心配性だからこそ…西翔子の進む道~G1浜松スピード王決定戦

引用元:スポーツ報知
【オートレース】慎重で心配性だからこそ…西翔子の進む道~G1浜松スピード王決定戦

◆第67回スピード王決定戦(G1、18日・2日目、浜松オートレース場)

 取材が終わって帰路に就いている間、ぼんやりと考えることがある。「理想のオートレーサー像ってどんなだろう」と。

 この競技はモータースポーツである。体はでかいより小さい方がいいに決まっている。「小柄な選手が有利という規定概念を僕が壊します」と取り組んでいる佐藤励には怒られちゃいそうですが。

 トップ級の多くが強度の負けず嫌い症候群を絶賛患い中なので、この気持ちは備えておくべきだ。

 家族がいた方がいいのか。右利きと左利きならどちらにより適性が傾くのか。学業は必要なのか。アルコールはたしなんだ方がいいのか。考えているうちにあっと言う間に家に到着してしまう。

 そして、性格です。これが難しい。ワッショイ&ドンドンのイケイケ系と石橋叩き系の慎重派。果たして、どっちがオートレーサーという職業に向いているのだろうか。

 2日目1Rで圧倒的人気を集めながら、勝利をつかみ損ねて2着ゴールだった西翔子は慎重派の代表だ。

 惜敗してロッカーへ戻った西は自身にゲンナリモードだった。「初日は1着できたし、今回は試走も出て、ハンデ位置もいい。でも、普通にスタートを出て行けばいいって思えないんですよね。とにかく心配性なんで。試走で3秒25も出ていたとしても、そう思えないんです(苦笑)。う~ん」

 2021年に35期生としてデビュー以来、西はずっと自身の心配性キャラと向き合いながら、技量を高めてきた。

 デビュー当時から、よく練習に向かっていた。「練習でちゃんとできないうちは本番で同じ走りをしたくないので」は彼女の定番口癖だった。

 安心できるまで、納得できるまで、自分を信じることができるまで。練習に練習を積み上げて、本番へ挑んだ。

 思えば青山周平だって心配性だ。「何が起こるかわからないんで」と連勝ラッシュの時も、格下選手より作業を繰り返して、王者となった。この仕事をするにおいて、慎重な気質は決してマイナスには作用しない。

 「私は4歳からバイクに乗って、モトクロスを続けていました。でも、それと同時に陸上もやっていたんです。大会にも出場しました。小さい頃って怖さを知らないじゃないですか。子どもの頃にバイクだけをやって、恐怖心のないうちにたくさん練習していたら、もっと上達できていたのかもしれないですね。転倒する怖さを知った後に本格的にモトクロスに乗ったので、やっぱり怖さに慎重になっちゃうんですよ」

 典型的なイケイケ派の小林瑞季が「練習ではできないことが本番でやれちゃった。何かもう勢いだけで行っちゃいました」と言っていたことがあった。でも、彼は大成功の反面、トンデモ失敗も浴する。

 どちらがいいかは、その場面、シチュエーションによるのだろうが、個人的には慎重派を推したいところなんですけれどね。

 そういえば先日、彼女は人生初となるフルマラソンに挑戦したという。そして、見事に42・195キロを走り抜いたと笑顔で伝える。

 「あの時、走りながら考えていたんです。やっぱり私はカメなんだって。コツコツとコツコツと積み重ねていく。それが好きなんだって」

 でも、オーバルコースで躍動する時の西は、間違いなくウサギだ。快速ラビットだ。女子ではそれこそ1、2を争う速力が彼女にはある。勤勉カメさんはコツコツと慎重に丁寧に練習を繰り返して、潤沢過ぎるスピードを手に入れ、ウサギへと変身してみせた。

 あとは自信を己のハートにインストールするのみ。これからも心配性で構わない。慎重派には慎重派のメリットがある。必ずある。頑張れ~タートルラビット翔子さん!

(淡路 哲雄)