<デフリンピック>舞台を失った選手の力も 男子棒高跳び・北谷3位 デフリンピック

引用元:毎日新聞
<デフリンピック>舞台を失った選手の力も 男子棒高跳び・北谷3位 デフリンピック

 東京デフリンピック第9日は23日、駒沢陸上競技場で男子棒高跳びが行われ、前回王者の北谷宏人選手(東京パワーテクノロジー)は3位だった。

 一番輝く色ではないが、2大会連続のメダルを獲得した。今大会の北谷選手にとって大きな力となったのが、デフリンピックに出場できない選手の支えだった。

 11月上旬、デフ陸上日本代表は、都内で合宿を実施した。本番に向けて真剣に練習する北谷選手の姿を動画撮影し、身ぶり手ぶりをまじえてアドバイスする人がいた。

 同じデフ棒高跳びで活躍する佐藤湊(そう)さんだ。佐藤さんはトランスジェンダーであることを公表して男性として暮らしつつ、ホルモン療法を受けずに競技では女性の枠で出場してきた。

 個人記録ではデフリンピックの出場資格を満たしていた。だが、女子棒高跳びは、実施条件である「2地域・5カ国」からの選手の参加がなく、競技自体が中止になった。

 「一緒に練習を積み重ねた仲間が、納得できる結果を残せるように」。佐藤さんは自分が出場できなくても、自国開催の舞台を控える仲間たちを献身的に支えた。

 「女子が出場できなくなり、自分ですら、もやもやした気持ちがあった。逆の立場で、自分が快くサポートできるだろうか」。北谷選手には、感謝だけでは言い表せない気持ちがあった。

 大会1カ月前、北谷選手は左足首の靱帯(じんたい)断裂という大けがに見舞われた。全治2カ月の診断を受け、出場が危ぶまれたが、痛み止めを服用しながら最後まで戦った。

 「けがをして不安だったと思うけど、跳びきった。気持ちの強さは素晴らしかった」。佐藤さんは、そう北谷選手をねぎらった。【川村咲平】