前編:工藤慎作(早大)が挑む己との戦い
箱根駅伝5区の代名詞的選手となった"山の名探偵"工藤慎作は、2番手でタスキを受け、3度目の山上りをスタートした。早稲田大の往路優勝を担い、ひたすら前へ、前へ。10km手前で中央大を捉えて先頭に立ったが、自身の走りには異変が――。
【1分12秒前をいく中大を射程に入れて】
今年の箱根駅伝の往路・小田原中継所。早稲田大学の工藤慎作(3年)が、後輩の鈴木琉胤(1年)からタスキを受け取ったのは、先頭の中央大から1分12秒遅れの2位だった。
「思ったよりも上の順位で来たなって思いました。3区の山口竣平(2年)はケガ明けでしたし、4区の鈴木琉胤はもちろんポテンシャルはありますけど、1年生なのでどうなのかなとわからなかったので」
3年連続の5区をまかされた工藤は、自身が想像していたよりも早く、山上りに出発した。
チームが総合優勝を成し遂げるには、主力選手を並べた往路で先行することが絶対条件。早大のストロングポイントと自認していた工藤は「前にいた中大を意識していました」と言い、先頭を奪うべくレースを進めた。
「1分12秒は結構差があるなって感じましたが、いけると思っていました」
単純に計算して、自分が1時間09分00秒で走れば、相手が1時間10分12秒で走らなければ追いつくことができる。中大の柴田大地(3年)は3000m障害で実績のある実力者だが、十分に逆転は可能だと考えていた(1時間09分00秒は従来の区間記録を上回るタイム。1時間10分12秒でも5区の歴代トップ10に入る)。
「前半は余裕を持ちつつ、小涌園前(11.7km)を過ぎたあとぐらいからフルスピードというか、アクセルを踏んでペースを上げていくイメージでレースプランを立てていました」
函嶺洞門(3.5km)までは工藤は誰よりも速かった。突っ込んでいるつもりはなかったが、「平地の走力が上がっているぶん、余裕はありました」と言う。
しかし、函嶺洞門を過ぎて本格的な上りが始まると、「今日はちょっと微妙だな」と感じるようになった。
大平台(7.0km)の通過タイムは黒田朝日(青学大・4年)に次ぐ2番目に下がったが、工藤もまた区間記録を上回るペースを刻んでいた。前回の自身のタイムを比べると13秒も速かった。それにもかかわらず、「うまく走れていない」という感覚は大きくなっていた。
「速くは走れていましたけど、体の張る部分、負荷がかかる部分がいつもと違う場所だったんです」
いつもは臀部とハムストリングス(太もも裏の筋肉)に張りが出るが、今回はそれにプラスしてふくらはぎへのダメージも大きかった。それが「うまく走れていない」ことを表わしていた。
それでも、10kmを前に中大の柴田をとらえ、早々に先頭を奪った。
芦ノ湖までは残り約11km。青学大・黒田にじわじわ差を詰められているとはいえ、まだ2分近い差があった。この時点で多くの人が早大の往路優勝を疑わなかったのではないだろうか。
「工藤のほうが黒田選手よりも入りが速かったですし、これでいけるかなと思った」と花田勝彦・早大駅伝監督。当の工藤も「勝てるかも」という考えが頭をよぎったという。
ただ、トップを走っていても苦しいことに変わりはなかった。
「まずは先頭に立ちましたが、きつかったので、これはまずいなっていう感じもありました。勝てるかもと思いましたけど、油断はできないと思っていました」
後方から青学大の黒田が追い上げてきているのも把握しており、気を緩めるわけにはいかなかった。
"山の名探偵"工藤慎作(早稲田大)が振り返る3度目の箱根駅伝5区と黒田朝日(青学大)との距離感
引用元:webスポルティーバ


