選手として走った都大路 白バイで先導 京都府警の寸田桜さん

引用元:毎日新聞
選手として走った都大路 白バイで先導 京都府警の寸田桜さん

 選手として走った夢舞台は苦い思い出。でも、もう一度走りたい――。

 21日開催の男子第76回・女子第37回全国高校駅伝競走大会(毎日新聞社など主催)で、京都府警交通機動隊の寸田桜巡査(26)が女子選手たちの先導役を務める。9年前、強豪・立命館宇治(京都)の3区走者として都大路を駆け抜けたが、一度は離れた駅伝に白バイ隊員として戻ってきた。

 長距離走に出会ったのは小学6年の時。球技や短距離走は不得意だったが、長距離は違った。

 始めるとすぐに結果が出た。地元・京都市で開催された駅伝大会でいきなり優勝を経験する。「意外とイケるんちゃうかな」。中学では駅伝の近畿大会にも出場。練習の成果がタイムで明確に表れる、陸上競技が性に合った。

 中学時代、チームでも個人でも全国大会には届かなかった。その分、師走に開かれる都大路に強い憧れを抱いた。「やるからには全国を目指してレベルの高いところでやりたい」。高校は、第1回から出場し続け、全国を制した経験もある名門に進んだ。

 高校では毎日の練習、各地での大会出場に加え、遠征や合宿に明け暮れた。10キロ走ることもある朝練のため、学校には始発の電車で向かう日々だった。そのかいもあり、3年生で初めて都大路のメンバーに入った。

 念願がかなっての出場だったが、当日は「めっちゃ緊張した」。本調子でなく、余裕もなかった。走った3区で順位を落とし、チームは9位。入賞を逃した。

 「足を引っ張ってしまった。夢はかなったけど、悔いの残る大会になってしまったというか……」。沿道には中学の同級生も応援に来てくれたが、思うような活躍は見せられなかった。

 ほぼ休みのない毎日。都大路翌日や卒業式前日も練習した。「ハードやった。でも他ではできない濃い3年間。やりきったなと」。未練はなく、卒業を機に陸上から離れた。

 しかし、駅伝への思いが不意に再燃する。就職活動を控えた大学3年の冬、知り合いからの一言にハッとした。

 「『桜ちゃんは体力があるし、性格的にも警察官は向いているんじゃない?』と言われて。そこで警察官になるなら、駅伝の先導がしてみたいと思うようになった」

 切り替えも立ち直りも早い性格だ。苦い記憶の都大路だが、母校の応援には毎年駆けつけていた。府警の採用面接や警察学校の自己紹介では、目標を何度も口にした。「都大路の先導がしたい」

 民間勤めなら目にする機会のない事件や事故の現場。特に交通死亡事故に出くわすと、心が沈んだ。ただ、体力面は初めて「陸上をやってきてよかった」と思えるほど、苦にしなかった。そして今年、大役をつかみ取った。

 高校時代の恩師で、現在も指揮を執る荻野由信総監督は「(寸田さんの先導を)ずっと夢見ていた。現実になるのはうれしい限り」と感無量。卒業後も交流が続き、見守ってくれた。寸田さんは「常に気にかけてくださっていた」と感謝し、「選手がこの舞台にかける気持ちは、私自身もよく分かる。悔いなく、選手が力を出し切れるように先導を務めたい」と意気込む。

 夢をかなえた喜びも、苦い記憶も詰まった都大路。「陸上で恩返しできなかった分、今回は少しでも恩返ししたい」。あの時は走ることができなかった先頭を、9年越しに走ってみせる。【資野亮太】