新鋭たちよ、強く育て 行ける時に「上のレベル」に行ってしまった方がいい 末續慎吾 スポーツ一刀両断

引用元:産経新聞
新鋭たちよ、強く育て 行ける時に「上のレベル」に行ってしまった方がいい 末續慎吾 スポーツ一刀両断

今月、名古屋市で行われた陸上の日本選手権を見て、新しい世代が台頭してきたなと強く感じた。特に驚かされたのは男子400メートル障害の後藤大樹(たいじゅ)(京都・洛南高)だ。予選で48秒31をマークし、従来の高校記録(為末大の49秒09)を更新すると、決勝では48秒09まで記録を伸ばした。このタイムは18歳未満の世界最高記録だという。見事、優勝を果たし、愛知・名古屋アジア大会代表に決まった。

彼はまだ高校2年生で、順調に成長すれば、久しぶりに「世界のメダル」を見せてくれる存在になるのではないか。中には「若い選手に過剰な期待は慎むべきだ」と言う人もいるかもしれないが、こういう規格の選手には「メダル」と言っていいと思う。もう行ける時に、上のレベルに行ってしまった方がいい。

今の高校年代には、昨年の全国高校総体男子100メートルで10秒00を出した清水空跳(そらと)(石川・星稜高)がいる。日本選手権を10秒16で走った菅野翔唯(かい)(群馬・東農大二高)も能力が高い。彼らが日本陸上界のネクストジェネレーション(次世代)だろう。

僕が世界選手権男子200メートルで銅メダルを獲得したのが23年前。以降、国内では100メートルの9秒台や200メートルの19秒台など日本人未到のタイムに注目が集まることが多かった。9秒台や19秒台は実力を示す一つの指標ではあるものの、やはり駆けっこは順位、何番かを競う世界だ。走路やスパイクの改良もあり、記録は世界的に向上している。だからこそ、日本選手も速い自己記録を持つのは当然で、そのうえで着順を取る強さが求められる。強さとは何かを考えなければいけない。

世界大会で活躍した東海大の先輩たちは、それぞれ強さの芯を持っていた。400メートルファイナリストの高野進先生なら「自尊心」、100メートルと200メートルで準決勝に進んだ伊東浩司さんなら「執念」。2人とも何かを成し遂げようとするエネルギーは似ていた。タイムではないところで走っていたからタイムを残せた。それは僕も同じだ。

近年、会話の中で「日本人初の9秒台」「末續の200メートル日本記録」などと出てきても、さほど僕の意識が向かなかったのは、「メダル争いをしてナンボ」という感覚だったからだ。今回、自分の価値基準と重なりそうな新鋭が出てきて、とてもうれしくなった。たくましく育つことを楽しみにしている。