陸上の日本選手権マラソン競歩は15日、今秋の愛知・名古屋アジア大会の代表選考を兼ねて石川県能美市営コースで行われ、男子は諏訪元郁(もとふみ)(愛知製鋼)が2時間58分21秒で優勝し、代表に内定した。女子は梅野倖子(LOCOK)が3時間33分47秒で制し、ハーフマラソン競歩に続き代表に内定した。日本選手権の競歩がマラソンの距離で行われるのは初めて。
■森林組合からつかんだアジア大会
「アジア大会内定」を意味する看板を手にした諏訪は、カメラマンが求める笑顔をうまくつくれなかった。涙がにじむ目を必死に開けて、笑う。「少しだけでも恩返しができたと思ったら、涙が止まらなかった」
新潟・中越高を卒業後、地元の森林組合でフルタイムで働きながら競技を続けた。勤務は午前6時から午後6時。伐採の仕事は肉体的にも疲労がたまる。雪が積もる冬は、1周200メートルの体育館を100周歩いた。「つらかったけど、お尻をたたいて練習した」
転機は2020年の元旦競歩。2位に入り、当時愛知製鋼のコーチだった内田隆幸さんのスカウトを受けた。現ハーフマラソン競歩世界記録保持者の山西利和、世界選手権と五輪に計4度出場している丸尾知司のチームメートになった。
練習で設定されたペースは「世界レベル」。期待されていると理解しながら、ついていけない自分が嫌だった。でも内田さんは「フォームはよくなっている」と言ってくれた。
昨年12月、内田さんが80歳で亡くなった。その内田さんが暮らしていた能美市でのレースには胸に喪章を着けて挑んだ。30キロまではためて、後半勝負。その展開通りにレースが進み、「内田さんが追い風を吹かせてくれている。守り神だ」。
一度は先頭に引き離されたが、35キロを過ぎてから逆転。26歳で初の主要国際大会となるアジア大会の代表に内定した。
内田さんが生きていたら、どんな言葉をかけられそうですか。その質問には「『まだまだ』って言われると思います」と笑った。
厳しくも愛情深かった恩師のために、アジアのメダルをつかみにいく。(加藤秀彬)
マラソン競歩で諏訪がアジア大会内定 亡きコーチが「守り神だった」
引用元:朝日新聞


