競歩選手はマラソン「サブ3」!? 【五輪のミカタ この技このルール】(10)

引用元:時事通信
競歩選手はマラソン「サブ3」!? 【五輪のミカタ この技このルール】(10)

 人間の基本動作の一つである「歩くこと」を競技スポーツにしたのが競歩。一度レースを観戦すれば想像以上のスピードに驚き、もどかしいイメージは覆されるかもしれない。東京五輪代表の鈴木雄介(富士通)が持つ男子20キロ競歩の世界記録(1時間16分36秒)のペースは、1キロあたり3分50秒を切り、単純計算でフルマラソンを2時間41分台でゴールする。時速約16キロにもなり、成人男性の通常歩行の約3倍、いわゆる「ママチャリ」並みの速さだ。日本は東京五輪のメダル候補がそろい、「競歩大国」となりつつある。

【写真】2019年世界選手権男子50キロ、先頭でゴールする鈴木雄介

◇「歩く」と「走る」の違い

 「歩く」と「走る」の違いはどこにあるのか。最も大きな違いは、歩きはどちらかの足が常に地面に着いており、走りは両足とも地面から離れている時がある点だ。膝を曲げて伸ばすという「バネ」を使うのも走りの特徴。

 このため、競歩はこの2点がルールの大きな柱になっており、両足が地面から離れると「ロス・オブ・コンタクト」、前に出した足が地面に着いてから垂直になるまでに膝が曲がると「ベント・ニー」の反則となる。普通に歩く動作に比べて厳しいのが後者で、ほとんどの人が「ベント・ニー」の違反と判定されるだろう。

 レース中はトラックに6人、道路には6~9人配置される審判員に歩型を目視で判定される。違反が疑われる時は黄色のパドルで注意を促され、違反と判断されたら赤色のカードが出されて警告を受ける。各審判員は同じ選手には1枚しか赤カードを出せない。選手は3人以上の審判員から赤カードを出されると失格になる。

 残り100メートルからゴールまでの間は、審判員主任から歩型違反があったと判定されると、それだけで失格となる。ラストの競り合いやスパートで焦ったり力んだりして歩型が崩れないよう、最後まで気を抜けない。また、審判長は競技者があるまじき行為をした場合、競技から除外する権限を持っており、過去に審判員が見ていないところで走った選手が失格となったケースがある。

 近年、世界選手権など主要大会では「ペナルティーゾーン」のルールが採用されている。3人の審判員から赤カードを出されても失格にはならず、所定の場所で待機する。待機後はレースに復帰できるが、計4人以上から赤カードを出されると失格となる。

 待機時間は20キロで2分、50キロでは5分と距離によって異なる。いずれにせよ致命的なタイムロスになるが、異例の展開となったのが2018年アジア競技大会(ジャカルタ)だ。気温35度近い中での男子50キロ。先頭争いをしていた勝木隼人(自衛隊)が34キロ手前で警告を受けてペナルティーゾーンに入った。4位まで後退したものの、5分間の足止めが体力の回復にもつながったのか、再スタート後はぐんぐん加速。先を行く選手が暑さで軒並み失速する中、逆転で金メダルを獲得した。次ページは:最も過酷な競技

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