【東京五輪】4継金のための「戦略」発表 短距離個人2種目出場は“条件つき”に

引用元:月刊陸上競技
【東京五輪】4継金のための「戦略」発表 短距離個人2種目出場は“条件つき”に

 日本陸連は3月19日に都内で理事会を開き、2020年東京五輪の代表選手選考要項などについて審議し、承認した。

 注目を集めていたのが、男子短距離の選考基準。昨年末の理事会で「男子4×100mリレーでの金メダル獲得に向けて、100mと200mの出場を原則1種目に限る」という項目を選考に盛り込むことが検討事項として挙げられていた。

 今回の理事会で承認された選考要項に種目制限について明記されなかったが、4×100mリレーについては「戦略」というかたちで明文化された。

 日本陸連の戦略としては、
(1)ダブルスタート(100m、200mの両種目出場)はこれを回避する
(2)ただし、基準を満たした場合には、十分なコミュニケーションをとりながら複数種目エントリーとリレーに向けた強化を進める
 とした。

 その基準については
1)当該競技者が100mおよび200mで、少なくとも決勝進出の可能性を示す記録水準に到達すること
2)日本選手権100m、200m両種目優勝すること
3)ダブルスタートが、強い負荷がかかることを認識した上で、4×100mリレーにも出場する強い意志があること
4)4×100mリレーで最高のパフォーマンスが発揮できるよう、最大限の準備をする意思があること。そのためには、リレー準備に向け強化委員会が計画し、参加を求める遠征、競技会および合宿に、強化委員会が特に認めた場合を除き、すべてに参加すること
 と明記された。

「決勝進出の可能性を示す記録水準」とは、具体的な数字は明記されなかったが、過去4年の世界ランク8位平均にあたる強化選手標準記録の「シルバーが目安になる」とし、2020年度では100m9秒93、200m19秒94あたりが求められる。
※日本記録は100m9秒97、200m20秒03

 つまり、100mと200mの2種目で五輪代表となるためには、世界ファイナルレベルの力を持ち、日本選手権を2冠。その上で、リレーの活動に積極的に参加する選手、という条件がついたことになる。

「拘束力」がある選考要項ではなく、あくまで「戦略」ではあるが、昨年末以降、現場レベルと何度も話し合いの場が設けられ、「現場から大きな反対の声はなかった」といい、合意を得られた「申し合わせ事項」だとした。

●厳しい日程とエントリー規定

 そもそも、なぜ100mと200mの種目制限が議題の対象となったのか。

 日本陸連にとっても、選手たちにとっても、東京五輪での4×100mリレーの金メダルは大きな目標だというのが一つ。

 その上で大きな要因としては
・東京大会においては、4×100mリレーのエントリーメンバーが5人(リオ五輪は6人)であること
・エントリー5人の内100mの代表は全員参加することが条件であること
・日程的に厳しいこと
 が挙げられる。

●東京五輪の短距離種目の日程
2日目 100m予選
3日目 100m準決勝、決勝
4日目 ―
5日目 200m予選、準決勝
6日目 200m決勝
7日目 4×100mリレー予選
8日目 4×100mリレー決勝

 2種目出場+リレーにおけるコンディション面の維持が難しいとされる。実際、15、17、19年の世界選手権での日本をはじめ、中国やイギリス、カナダといった強豪国でも、苦戦やケガなどアクシデントが起きている。

 ドイツやイギリスといった国の東京五輪代表の選考規定にも「ダブルスタートは避けてほしい」という一文が入っているという。それだけ、「2種目+リレー」の負担が大きい。

 理事会終了後、日本陸連の麻場一徳強化委員長が取材に応じた。

「陸上競技はあくまで個人競技というのは理解したうえで、一丸となって東京に向かっていきたいという戦略。現場のみなさんにも理解していただいています」

 標準記録を突破している選手が日本選手権で3位以内に入れば代表内定となる。その後は「今回発表した戦略に沿って、コミュニケーションをとって進めていく」(麻場委員長)としている。

「晴れの舞台で個人の力を最大限発揮できるよう支えていきたい」という思いはもちろん日本陸連も持つが、同時に「4×100mリレー金メダル」は日本陸連、選手、陸上界にとっての悲願でもある。

 そして、2種目とリレーで最大の力を発揮するためには、日程・メンバーエントリー規定、そして世界トップクラスの選手と比較した実力面で、厳しいこともまた事実だ。

 麻場委員長は「みんなで共有して、応援してくださるみなさんを含め、全員で金メダルに向かっていきたい。今後もよろしくお願いします」と締めくくった。 月陸編集部

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