「見えないことを利用し集中力高める」 別大視覚障害者マラソン醍醐味と楽しみ

引用元:毎日新聞
「見えないことを利用し集中力高める」 別大視覚障害者マラソン醍醐味と楽しみ

 2日に行われる第69回別府大分毎日マラソン(毎日新聞社など主催)では、視覚障害選手の部が東京パラリンピック代表推薦選手最終選考会を兼ねて実施される。1日に大分市内で開かれた記者会見では、有力選手が視覚障害者ならではのレース中の注意点や、観戦者に向けた楽しみ方を紹介してくれた。

 ◇「序盤は自分のリズムを整えることに精いっぱい」

 視覚障害がある選手は、周囲にいる選手の様子を見て確かめたり、距離感をつかんだりすることが難しい。既に東京パラリンピック代表推薦を得ている男子の堀越信司(NTT西日本)は「普段から、周囲の足音や息づかいを気にしながら走っている」と話す。2016年リオデジャネイロ・パラリンピックの銀メダリストで東京の代表推薦を得ている女子の道下美里(三井住友海上)は「(混雑している)序盤は雑音の中で自分のリズムを整えることに精いっぱい」と苦労を明かした。

 特に、自分の前にいきなり健常者の選手が入ってきた時の対応が難しいという。女子の近藤寛子(滋賀銀行)は「急に対応することができない。(他の選手の妨げにならないよう)ルールを守ってもらえるとありがたい」と要望。伴走者から周りの選手に声をかけ、配慮を依頼することもあるという。

 一方で道下は、常に白いもやの中にいるようにしか見えないことを快走の原動力にもしている。「自分の足音や呼吸を淡々と意識して、見えないことを利用して集中力を高めている」。堀越も最近は、背後の様子までわかるようになってきたという。

 ◇路面予測できず「目をつぶって片足で立つ感覚」

 路面の状況が見えない難しさもある。別大毎日マラソンのコースは、スタートから3キロと、折り返した後の17キロから24キロまでは、カーブが多く路面も右に左にと傾いている海沿いの道路を通る。多くの選手がその区間について、「バンク(道路の傾き)が走りにくい」と指摘した。

 路面の変化が予測できない道路を走る難しさを、道下の伴走を務める志田淳さんは「健常者が目をつぶって片足で立つのと同じような感覚。足元が不安定な状態で視覚障害者が走ると、それだけでストレスになる」と表現する。道下は「その部分は我慢して走る」と覚悟を決めている。2日のレースでは、各選手が傾いた路面をどのように攻略するのかも注目点だ。

 ◇声援が大きな力に 家族や仲間は特別な方法で

 一方で、視覚障害のある選手にとっては、大きな力になるのが沿道からの声援だ。ただ、選手をより強く後押しするには、ひと工夫が必要なようだ。女子の青木洋子(NTTクラルティ)と道下は、ともに19年12月の防府読売マラソンで沿道から夫の声援を受けたが、気づかないことが多かったという。「頑張れ」といった声を聞いただけでは、誰からの声援かがわからないからだ。

 青木は「家族や仲間には、私にわかるような応援の方法をお願いして、作戦を練っている」と笑った。沿道から応援する時は、自分が誰かも名乗ると、選手の心に深く届いてパワーをもたらしそうだ。

 今回の別大毎日マラソンだけでなく、最近は国内の多くのマラソンやロードレースにも視覚障害のランナーが出場している。夏には東京パラリンピックも控えており、同じレースで走る人も、応援する人も、独特のポイントを知っておくと、一緒に楽しみ、盛り上げることができるだろう。【石井朗生】

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