五輪の開会式は「選手第一」選手席と行進短縮検討

引用元:日刊スポーツ
五輪の開会式は「選手第一」選手席と行進短縮検討

2020年東京オリンピック(五輪)の開会式について大会組織委員会が「アスリートファースト」を重視した案を計画していることが12月31日、複数の関係者への取材で分かった。各国チームが入場行進した後、選手負担を軽減するため、新国立競技場のフィールドに選手席を設ける案が浮上している。長時間かかる入場行進では短縮策として「2方向入場」を国際オリンピック委員会(IOC)に提案するなど、過去大会にはない斬新な開会式をつくりあげようとしている。

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「選手第一」の観点から開閉会式総合統括の野村萬斎氏率いる組織委の式典チームは、開会式全体の時間を通例の4時間前後から「3時間台前半」に短縮する方向で、計画立案を進めていた。演目の中で最も時間がかかり、選手の負担が大きいのが入場行進。そのやり方を模索してきた。

そこで浮上しているのが、入場済みの選手が着席して式典に参加できる選手席を設置する案。大事な試合を控える選手の負担軽減が目的で、開会式の文化プログラムを実演するステージ横や間に設ける。関係者によると現在、式典チームが具体的な演出やステージの仕様を検討中。その舞台の高さ次第で、選手が待機する場所に座席を設けられるか否かが決まるという。

入場行進順は古代オリンピック発祥の地としてギリシャが1番目に登場し、最後は開催国という順番。直近の大会を見ると、16年リオデジャネイロ五輪ではギリシャが入場し、開催国ブラジルの行進が終わるまで2時間以上かかった。12年ロンドン五輪は1時間40分程度だったが、08年北京五輪も2時間以上を要した。

選手たちは入場後、IOC会長や組織委会長のあいさつを聞き、聖火の点火まで会場に立ちっぱなしとなるのが通例だった。行進前の待機時間も加えると、相当な時間になる。さらに夜とはいえ、東京は暑さ問題も加わる。4年に1度の大一番を控える選手を思えば、再考の余地があった。

さらに入場行進自体も短縮できないかと組織委は計画を練ってきた。各国チームが2つの入り口から交互に入場し、2方向のルートで行進することで時間を短縮する計画をIOCに提案。しかし、IOCは「それだと各チームが国家元首らVIPが並ぶメインスタンドの前を通れない」との理由から難色を示した。ある組織委幹部は「ダメなことが多い。なかなか前に進まない…」と悩みを吐露。現在も行進時間を短縮する妙案を模索している。

セレモニー関係者によるとこれまで「間延びする」や「退屈だ」などと指摘された入場行進の演出も刷新したい考え。選手が新国立のフィールドを歩くだけで、観客やテレビ観覧者が楽しめる計画を練っている。「史上最もイノベーティブな大会を目指す」とする東京大会。持続可能な大会計画や予算削減に加え、選手のために開閉会式でも、IOCの慣例にメスを入れる覚悟を持って取り組んでいる。

◆五輪開会式の入場行進 国旗を先頭に参加選手が入場するパレード・オブ・ネーションズ(入場行進)は1908年ロンドン大会から。当時は参加22カ国だった。日本初参加の12年ストックホルム大会では金栗四三がプラカード、三島弥彦が日の丸を持って行進した。64年東京五輪の入場行進は、93カ国で開始から整列完了まで45分。開会式全体で約2時間だった。同大会の閉会式では国別に入場する通例が破られ、国や性別に関係なく選手が入り乱れて場内へ。IOCはこれを認め、その後は「東京方式」が恒例となった。

○…開会式の大きな見どころが、聖火の点火。開会式の演出の一部として、最終ランアーや点火方法が検討されている。過去大会の最終ランナーは五輪で活躍した有名なアスリートが多い。競技実績だけでなく、黒人差別と戦った96年アトランタ大会のアリや、先住民の隔離政策に苦しんだ00年シドニー大会のフリーマンのように「メッセージ性」を持つことも重要になる。

64年東京大会は、陸上選手としては無名の坂井義則氏が務めた。原爆が投下された45年8月6日に広島で生まれた大学生が「平和」「反戦」を訴えた。今大会の理念は「復興」。東日本大震災が起きた11年3月11日に被災地で誕生した子どもなど「ドラマ」や「ストーリー」も人選する上でのカギになりそうだ。

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