箱根駅伝でシードを死守するマネジメント…中央学院大・川崎勇二監督

 箱根駅伝で過去5大会続けてシードを守ってきた大学は4校しかない。前回優勝の東海大、2位の青山学院大、3位の東洋大、そして10位の中央学院大だ。豊富な戦力で激しい優勝争いを演じてきた上位3校とは違って、中央学院大はそつのないレース運びで、2015年から8、9、6、10、10位としぶとくシードに踏みとどまってきた。箱根駅伝を知り尽くした川崎勇二監督(57)には、シードを死守する緻密(ちみつ)な戦略がある。(小石川弘幸、文中敬称略)

■ぶれない選手を育て、直前まで調子を見極める

 「全員が区間一桁でいけばいい。大事なことはそれだけ。その力はあると思う」

 川崎の方針は明快だ。確かに前回の箱根で各区間9位だった選手のタイムを合計すると、総合8位に相当する。ただ、全員がブレーキを起こさず走りきるのは実際には難しいのだという。「5強は強いし、帝京さんもそれに近いレベル。東京国際には勢いがあり、箱根になると早稲田はやたらと強い。シードの10枠はすぐに埋まってしまうが、箱根駅伝は失敗する。だから面白い。10人をうまく走らせるのは至難の業です」

 では、ミスをなくすためにどうするか。まずはきちんと設定通りのペースで走れる選手を育成する。川崎は、秋以降の練習で、必ず選手を単独で走らせる。「実際のタイムと体感を一致させるため」だという。「失敗する選手は(序盤の)入りが悪い。むちゃくちゃ速いか、むちゃくちゃ遅い。1万メートルで同じ28分半のタイムを持っていても、(周りのペースに惑わされず)単独で走れる子と、走れない子では全然違う」

 次にペース設定だ。ペースの上限と下限を選手自身に考えさせ、話し合いながら細かな修正を重ねる。区間5~6位を目指して、途中で崩れても9位にとどまるペースを探す。「背伸びすることなく、(力を)加減することなく、うまくコントロールするのが監督の役目。上位校に振り回されると自分たちを見失う。上位校には上位校の、下位校には下位校の戦い方がある」

 そして選手を見極める。「大会前に暗くなる子は絶対走れない。うまく調整させて、時に鼓舞して、時にはけなして、10割は難しくても7~8割の状態に持っていけるようにコントロールする」

 レースの直前まで選手と言葉を交わす。往路のレース終了後、川崎は今来たばかりのルートを引き返す。各中継所の近くに宿をとって翌日の復路に備える選手たちと顔を合わせ、さらに付き添いの部員にも声をかける。「必ず朝、(選手の)様子を見て、報告してくれよ」。実際に「体調が悪いようだ」という部員からの連絡で、当日朝に選手を交代したこともある。10区を走る予定の選手と会って箱根の宿舎に戻ると、午前0時前後になるという。「一刻一刻、選手も変わる。直前まで顔色を見ることはすごく大事だ」

■6年連続へ、台風19号を乗り越えよ

 今シーズンは台風19号の影響で千葉県我孫子市の大学近くのグラウンドが冠水し、12月上旬まで使えなかった。大型バスを借りて茨城県龍ヶ崎市の競技場に通ったり、千葉県富津市の合宿地まで4時間をかけて往復したりと苦労を強いられたが、川崎は「マイナス面とは思わない」という。「学生には、むしろ時間の大切さやグラウンドを使えるありがたみを感じてもらえたんじゃないか」 

 スターも大砲もいないチームの、6年連続シードに挑む戦いが、まもなく始まる。

■プロフィル

川崎勇二(かわさき・ゆうじ)中央学院大の駅伝部監督、法学部教授。1962年7月18日、神戸市出身。報徳学園高、順天堂大OB。学生時代、箱根駅伝出場1回。

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