知る人ぞ知る“五輪レガシー” ある大学の陸上競技場に

引用元:毎日新聞
知る人ぞ知る“五輪レガシー” ある大学の陸上競技場に

 愛知県刈谷市の愛知教育大の陸上競技場に、知る人ぞ知る“五輪レガシー”がある。2021年の東京オリンピック・パラリンピックで補助競技場(サブトラック)に使われた床材が今年2月までに移設された。だが、五輪の名称を宣伝に利用できるのは大会スポンサーに限られ、大学側は対外的にPRできないため、このことは一部の人にしか知られていない。

 ◇サブトラックの床材を譲渡

 東京五輪・パラリンピックでは、メインスタジアムの国立競技場(東京都新宿区)に隣接する神宮外苑の軟式野球場に、大会出場選手たちが練習やウオーミングアップ用に使用するためのサブトラックが仮設整備された。

 サブトラックの床材はイタリア・モンド社が大会用に開発した最新全天候舗装材「モンドトラックWS―TY」を採用。モンド社の日本の販売代理店で共同開発したクリヤマジャパン(大阪市)によると、記録が狙いやすいよう反発性に優れ、耐久性が高いのが特徴という。大会終了後の21年秋に解体された。

 一方、愛知教育大の陸上競技場のトラック床材は1994年に整備されて以降、老朽化が進んでいた。この状況を知っていたクリヤマ社が20年2月ごろ、解体後のサブトラック床材の無償譲渡を同大に打診。改修を検討していた同大は21年12月~今年2月、約5000万円かけて譲渡されたトラック床材に張り替えた。状態の良くない床材は使用せず、同大競技場のカーブ部分は1~4レーンのみ替えた。

 ◇スポンサー以外は宣伝できず

 同大陸上競技部の福山斗偉(とい)主将は「五輪で使用されたトラックで練習できることは光栄なこと。良い環境でモチベーションが上がり、練習に身が入る」と喜ぶ。クリヤマ社によると、現在この床材が使用されているのは国立競技場と同大競技場のみ。大学側としても五輪レガシーが息づく競技場として大々的にアピールしたいところだが、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(清算法人)は「大会ブランド保護基準」の中で、スポンサー企業以外が五輪の名称やイメージなどを使用したマーケティング活動や広報宣伝活動を禁じている。

 大会組織委によると、仮設整備されたサブトラック床材の所有権はモンド社側にあり、組織委担当者は「大会終了後の2次利用は私どもの範囲外」として愛知教育大への譲渡については関与しないとする一方で「大会終了後であっても、大会ブランド保護基準に基づき、商業的な利益につながる可能性のあるPRは控えてもらっている」と話す。

 愛知教育大の陸上競技場の端に建つ記念碑には「モンドトラックWS-TYを採用しています。モンド社からこの床材をご提供いただき完成することができました」と記されているが、そこに「五輪」の文字はない。同大は刊行物への記載や報道発表もできず、毎日新聞は独自のルートで情報を得た。

 同大関係者は取材に「せっかくの良い施設なのでもっとアピールしたいが、できないのは残念」と話している。【川瀬慎一朗】