義足のアーティスト・前川楓「この舞台楽しめた」 パラ走り幅跳び

引用元:毎日新聞
義足のアーティスト・前川楓「この舞台楽しめた」 パラ走り幅跳び

 七色の髪が冷たい空気を切り裂いた。2日夜に東京・国立競技場で行われた東京パラリンピックの陸上女子走り幅跳び(義足・機能障害T63)で、前川楓(23)=新日本住設=は雨に見舞われた難しいコンディションの中、自己ベストに3センチまで迫る記録で5位入賞を果たした。試合後は「この舞台を楽しめた」と笑顔がはじけた。

 「こんなに緊張すると思わなかった」と、試合直前は手足が震えた。1回目は4メートルに届かず、スタンドで見ていた所属先の先輩である男子走り幅跳び代表の山本篤から、「守りはいらない。どんどん攻めていこう」と声を掛けられ、気持ちを切り替えた。

 体もほぐれてきた4回目。「『楽しまないと損』と思い、やってみた」と、会場に手拍子を求めて助走をスタート。スピードに乗って、この日の自己最高記録となる4メートル23をマークした。メダルには届かなかったが、「今できる最大のパフォーマンスを出せた」。すがすがしい表情だった。

 三重県出身の前川は中学3年の時に交通事故に遭い、右大腿(だいたい)部から先を切断した。リハビリ後に陸上を始め、初出場の2016年リオデジャネイロ大会では走り幅跳びで4位となった。

 国内トップ選手として活躍する前川は、別の顔も持つ。義足をより身近な存在として感じてもらえればと、自身のSNS(ネット交流サービス)でおしゃれな外装の義足の写真や動画を積極的に公開。モデルとしてファッションショーに参加したり、得意の工作を生かして粘土細工を作って販売したり、多彩な活動はさながら「アーティスト」のようだ。

 髪の色を試合ごとに変える23歳は「テンションが上がる」と、この日は虹色を選んだ。義足にはカラフルなシールも施した。存在感は、どの選手よりも際立っていた。【真下信幸】

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