走ることも見ることもできない聖火リレー コロナで翻弄の1カ月

引用元:毎日新聞
走ることも見ることもできない聖火リレー コロナで翻弄の1カ月

 新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、東京オリンピックの聖火リレーが各地で「寸断」されている。5月1日から始まる沖縄県の本島部では、大阪府や松山市に続いて公道での実施が見送られた。規模を縮小する自治体も相次いでいる。聖火リレーには「本番に向けて大会の機運を醸成する」という目的があるが、その道のりは険しそうだ。【川崎桂吾、斉藤朋恵、遠藤龍、辻本知大、竹内望、遠藤孝康】

【写真】聖火が消えた…ランタンで再点火

 4月21日夜、松山市の城山公園で開かれたセレモニーには、悲愴(ひそう)感すら漂っていた。「走るのを楽しみにしていた皆様にその機会を与えることができず、すみませんっ」。聖火リレーの中止を決めた愛媛県の中村時広知事が涙ながらにわびたからだ。

 新型コロナの感染拡大によって、松山市内での聖火リレーは公道での実施が見送られた。大阪府(13、14日)に続く判断だったが、代替策として公園内を走った大阪とは異なり、ランナーが走らない初のケースとなった。無観客で行われたセレモニーでは27人のランナーが並び、順番にトーチに火を付けた。聖火皿に点火したアテネ五輪・女子マラソン5位入賞の土佐礼子さん(44)は、「知事が一番残念な気持ちなんじゃないかな」と気遣ったものの、会場には消化不良感が漂っていた。そこに「世紀の祭典」を迎え入れる祝祭感はなかった。

 聖火リレーは「Hope Lights Our Way/希望の道を、つなごう。」をテーマに、3月25日に福島県をスタートした。当初から感染対策と機運の醸成というジレンマに直面していたが、ここに来て感染拡大の「第4波」に翻弄(ほんろう)されている。

 5月1、2日に聖火を迎える沖縄県は那覇市などに適用されている「まん延防止等重点措置」のまっただ中。本島では公道でのリレーを中止した。代替案として1日は名護市民会館周辺で、2日は糸満市の平和祈念公園内で一般の観覧客を入れずに実施されることになった。会場では周囲に人が集まらないようテントを並べて目隠しを作り、スタッフや報道陣を含む関係者にもPCR検査の陰性証明の提出を求めるなど、「厳戒態勢」が取られるという。離島の宮古島市ではリレー自体を中止した。

 沖縄は前回1964年の東京五輪の聖火リレーの出発地だった。当時は米国の統治下にあったが、多くの島民が日の丸の小旗を手に各地で聖火ランナーに声援を送った。聖火の宿泊地になり、地元の人たちが寝ずの番をした名護市嘉陽地区。今回、そこを走る予定だった銘苅(めかる)信吾さん(33)は、地元の人から当時の様子を聞いていただけに、「走る姿を見せられなくて寂しい」と肩を落とす。

 大分県では県内2日目の4月24日、大分市内のコースを急きょ短縮した。この日は同市出身のタレント、指原莉乃さん(28)ら著名人ランナーを見ようと人が押し寄せる恐れがあったため、終着地「祝祭の広場」につながる直線約540メートルの走行をとりやめた。

 走る2時間前、自身のツイッターで「私は見ることができない場所を走ります」「待っていてもファンサービスはできません」と呼びかけていた指原さん。高さ3メートルの幕で囲われた会場に登場すると、「本来はたくさんの人に囲まれてというのが望ましいのですが」と複雑な表情を見せた。

 28日、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長らを交えた5者協議で、大会組織委員会の橋本聖子会長は「国内世論にはさまざまな意見がある一方、聖火リレーを通じて少しずつ希望を感じる話題も目にするようになった」と話した。ただ、その同じ日、元プロゴルファーの宮里藍さんが出身地・沖縄での聖火リレーを辞退する、というニュースが流れた。

 聖火は全国を回った後、7月に東京に入る。希望の火は人々の心に火を付けることができるだろうか。

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