陸上男子の相沢、福島の誇り胸に挑む五輪 中1で濁流の恐怖経験―震災10年

引用元:時事通信
陸上男子の相沢、福島の誇り胸に挑む五輪 中1で濁流の恐怖経験―震災10年

 新型コロナウイルスの影響で今夏に1年延期された東京五輪。陸上男子1万メートルで五輪代表の相沢晃(23)=旭化成=は、東日本大震災発生から10年の節目に開催される巡り合わせに、特別な感情を抱いている。「代表権を勝ち取ることができたのは偶然ではなく運命。復興五輪を福島代表として走れることは誇り」

 出身は1964年東京五輪のマラソンで銅メダルを獲得した故円谷幸吉さんと同じ福島県須賀川市。中学1年時に自宅で被災した。同市の藤沼ダムが決壊し、約150万トンもの貯水が流出。迫る濁流からかろうじて逃れたが、自宅は傷んでライフラインは一時寸断。知人がのみ込まれた。

 悲しみを和らげてくれたのが陸上だった。「走っている時だけは嫌なことを考えず、夢中になれた」。翌12年1月の箱根駅伝。同じ福島県出身の「山の神」、東洋大の柏原竜二さんが山登りの5区で区間新記録(当時)を樹立した力走に勇気づけられた。同校は「その1秒をけずりだせ」を合言葉に、2年ぶりの総合優勝。日常の「1秒」の大切さを痛感していた相沢は、心のこもった走りでたすきをつなぐ姿に胸を打たれた。

 自身も福島・学法石川高から東洋大に進み、4年時にはエース区間の2区で区間新(当時)をマーク。昨年12月の日本選手権1万メートルを27分18秒75の日本新記録で制し、五輪切符をつかんだ。「走っている時の苦しみは一瞬でちっぽけなもの。震災で苦しんでいる方がいるなら、もっと頑張らないと」。そんな思いが体を突き動かす。

 未曽有の災害から10年。「早いなと感じる。震災は忘れられない」と話す。東京五輪では強豪アフリカ勢に挑み、入賞が目標。「元気や勇気を与える走りが僕にはできると思っている。今はワクワク感でいっぱい」。今度は自分が故郷に希望を届ける番だと、気持ちを高ぶらせた。 

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