権限強いIOC、経費負担では組織委とも温度差…3日間の協議は波乱含み

引用元:産経新聞

 国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会と大会組織委員会、東京都などとの合同会議が30日、3日間の日程で始まった。最大の焦点は東京五輪のマラソン、競歩の札幌市での開催計画。IOCは組織委、都、国との4者によるトップ級会合で一定の合意を目指す方針だが、一方的な発表で計画を既成事実化したIOCに都側の不信感は強く、議論の行方が注目される。

 「個人的には東京でやるのがいいと思うし、『IOCの野郎』と言いたいが、選手の健康のためといわれてはね…」

 大会関係者が声を落とす。IOCの札幌移転案には、16日の発表直後から戸惑いと疑問の声が相次いだ。根底にあるのは、開幕まで9カ月を切った中、十分な説明なく「決定事項」としたIOCの手法への反発だ。五輪運動の「憲法」である五輪憲章は、IOCに強い権限を与えている。競技会場はIOC理事会の承認事項で、競歩も2018年2月の理事会で招致段階の新国立競技場発着から皇居外苑に変更された。

 IOCのコーツ調整委員長がこの日の冒頭あいさつで札幌開催案を「16日のIOC理事会の決定」と表現したのも、正当なプロセスを経たことを強調したとみられる。「組織委は単なるイベント屋。主催者であるIOCの指示に従うしかない」(組織委関係者)。札幌開催自体を覆すことは困難な情勢で、組織委はすでに札幌市中心部の大通公園を発着とし、コースは毎年8月に行われている北海道マラソンをベースとする方向で検討に入っている。

 もっとも、札幌開催で新たに生じる経費負担をめぐっては、組織委とIOCにも温度差がある。組織委の森喜朗会長はコーツ氏から電話連絡を受けた時点でIOCに負担を求める可能性を伝えた。BSフジの番組では、札幌開催に伴い移動が必要となる選手ら関係者の数は約2500人に上るとの試算も明かし、「膨大なお金がかかるとすると、それを組織委に持てと言っても無理」と語った。

 一方、コーツ氏は25日の小池百合子知事との会談で「開催都市との契約に鑑み、非常に重大なマイナスの影響を及ぼすという事柄に関しては組織委と話していきたい」と述べるにとどめた。都などがIOCと締結した「開催都市契約」には、IOCの指示で「結果として財政上の義務について重大な悪影響を及ぼすと考える場合、(中略)相互に満足がいく方法で対処することを目的に関係当事者と協議する」とあり、これを念頭に置いた発言とみられるが、IOCが負担する根拠がないことも意味する。また、五輪憲章には「IOCは五輪開催都市契約が定める拠出金のほかは、それと異なる内容の合意が書面でなされていない限り、大会の組織運営と財政、開催について財政的な責任を負うことはない」との文言もある。

 五輪憲章や開催都市契約をたてに、「開催都市」を軽んじているともとれるIOCの姿勢に対し、組織委内では都への同情論も聞かれる。コーツ氏は「さらなる説明が必要なら説明する。(4者会合で)みなさまにとって受け入れ可能な形をどうやったらできるかどうか、整備したい」と語ったが、協議は波乱含みだ。(森本利優)

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