DeNA陸上部が解散 実業団体制崩壊でプロ化の切磋琢磨は必然【スポーツ時々放談】

DeNA陸上部が解散 実業団体制崩壊でプロ化の切磋琢磨は必然【スポーツ時々放談】

武田薫【スポーツ時々放談】

 瀬古利彦がエグゼクティブアドバイザー(EA)を務めるDeNA陸上部が解散した。箱根駅伝で活躍した東海大OBの鬼塚翔太、館沢亨次ら所属選手とは随時契約で活動を支援していくとのこと。陸上界では既に昨年、日清食品陸上部が同じような方針を取っている。

 中畑清を新監督に据えてDeNAベイスターズが誕生したのが2012年。マラソンの代名詞・瀬古利彦を招いて陸上部を立ち上げたのは翌13年1月だった。古巣エスビー食品陸上部が12年8月に廃部を発表した時、瀬古は既に某企業への移籍話をまとめていたのだがドタキャンに。部員を抱えて夜も眠れず、DeNAからの誘いは涙が出るほどうれしかったと話していた。

 瀬古を除く選手スタッフ全員は最初から年間契約で、当時の田幸寛史監督はやがて中国電力へ、上野裕一郎は立教大学駅伝監督へ転出している。創部7年なら所属選手の競技生活として短過ぎたこともないだろう。

 実業団に所属している陸上選手のほとんどが社員ではなく契約選手だ。企業は減益によるPR効果が欲しいわけで、引退後の保障はないが待遇はいいから、選手にとってウィンウィンの環境。ただ、その幻想もコロナを機に一変しそうだ。

 実業団陸上の最大イベントは元日のニューイヤー駅伝である。そこに参加できるのは連合登録チームだけで、一般クラブは参加できない点が都市対抗野球とは違う。

 一部企業による“運動会”の人気と補強を支えているのが箱根駅伝だ。かつてはオリンピック代表やマラソンのトップ選手が中心だったが、今や「箱根を走った〇〇」と喧伝することで人気を維持。ニューイヤーは箱根の前座であり、アンコールといっていいだろう。

 選手の進路は大ざっぱに高校駅伝→箱根駅伝→実業団(アマ)→オリンピック(アマ)という図式だった。これがオリンピックのプロ化が進んだことで変わった。DeNAが個人活動の支援に回るというのは「箱根駅伝(アマ)→プロ」を示唆し、コロナをいい口実に、意味不明な実業団活動から身を引いたということだ。ドミノ的に広がりかねないが、どうなるのか?

■観客ファースト

 老舗チームの旭化成・宗猛総監督によれば、陸上部のある宮崎県延岡市は旭化成の城下町だそうだ。30年以上前に始めた5月の「ゴールデンゲームズinのべおか」は現在、延岡市共催で活気を呈し、人口12万人の地方都市から宗兄弟、谷口浩美、森下広一らの代表選手が生まれたのも地元とのつながりだと強調する。

「ぼくたちはアスリートファーストじゃなく、観客ファーストでやってきた。日本はもっと観客を意識し、エリートマラソンは1周8キロを5周するなど変えなければ一流ランナーは育たない」

 いずれにしろ、実業団は明確にプロ化して切磋琢磨しろということなのである。

(武田薫/スポーツライター)

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